がん細胞はリンパ節を介して移転します
がん(癌)とは
正常な細胞が変異し悪性の腫瘍(できもの)になったもので、癌の発症部位からそれぞれ特殊な物質(腫瘍マーカー)が血液中に流れ出るので、その腫瘍マーカーの種類を見極めることにより癌の発症部位がおおよそ想定できます。
現在確認されている腫瘍マーカーの種類は、40種類以上有ります。
がんの外科手術において癌細胞の転移を予防する目的で、ガン細胞が捉えられている危険なリンパ節を切除(郭清)したり、放射線や抗ガン剤の治療などでリンパ管に閉塞や機能的障害が起きてリンパ浮腫を発症します。
術後のリンパ浮腫は、リンパ系への外部からの障害が原因であることは明らかになっています。
リンパ系の閉塞がリンパの流れに障害を起こし、リンパがうまく循環しないため不要な蛋白質が滞ってしまい、それを分解しようとして水分が集まり、体に不要な回収すべき老廃物(汚れたタンパクや病原体の残骸・少量の水分など)が間質(細胞と細胞の間)に溜まって起こります。
リンパは不要な老廃物を運ぶ役割を担い、集合リンパ管は排水路の役割をしています。
■リンパシステムは非常にもろくできていて、手術など外部からの物理的な要因以外に、放射線や抗ガン剤の治療などでもリンパ系に障害が起きます。
■リンパ浮腫は、なぜ乳癌や子宮癌の術後に発症しやすいのでしょうか
女性の場合、特に乳癌や子宮癌・卵巣癌などが大半です。
男性の場合、前立腺がんや陰茎がんなど鼠径部や骨盤部のリンパ節に影響する手術で、下肢リンパ浮腫の発症があります。
乳癌や子宮癌の施術部位は、
リンパの球心(リンパが心臓に戻ること)活動に重要な腋窩部や鼠径部・骨盤・大動脈周辺などのリンパ節群に集中していますから、リンパ節の郭清(切除)によるリンパ管の障害が顕著になり、リンパの流れが阻害され浮腫の発症を招きます。
上図は、メドー事業部提供の冊子「リンパ浮腫を治療するにあたって」小川佳宏先生監修(リムズ徳島クリニック院長)から引用
■リンパ浮腫の発症メカニズム(上図を参照)
障害の起きた集合リンパ管にリンパ液が滞留すると管は太くなり、膨らんだ部分にあるリンパの逆流を防止する役目の逆流防止弁が閉じなくなります(隙間が出来て穴が開いた状態)。
リンパ液は重力に従い逆流し更に液が溜まってしまい浮腫を増大させます。
逆止弁の障害を軽減するには、弾性ストッキングやスリーブ・バンテージなどで外部から圧迫
し、その部位にリンパが滞留しないように押さえ込む必要があります。そして徒手によるリンパドレナージや空気波動型のマッサージ器でリンパを誘導させる複合的な療法が有効になります。
特に腋窩部や鼠径部・骨盤部のリンパ管の閉塞は四肢から流れてくるリンパに対して、関所の入り口に当たる太いバルブが閉じられてしまうためリンパ浮腫発症の確率が高くなってしまいます。
◆子宮がんの場合、術後、下肢以外に下腹部や恥骨周辺の外陰部である鼠径部(そけい部:下腹部の恥骨のところで逆三角形をした脚の付け根の部分)にリンパ浮腫を発症する例が多く、痛みやしびれを伴い日常生活に支障をきたすことがありますから、術後は早めの治療を心がけて下さい。
◆特に乳がんの場合は術後数年経ってから発症する例も多いので、術後の浮腫観察が必要です。
■乳がんの術後、下肢にリンパ浮腫を発症
乳癌の術後間もなく、上肢ではなく下肢にリンパ浮腫を発症する事例が多くあります。
乳癌の場合、腋窩部のリンパ節を郭清(切除)するため上肢の浮腫は常識ですが、希に下肢のリンパ浮腫を発症することがあります。特に左腋窩部や胸管・鎖骨周辺のリンパ管に障害を起こすと、下肢からのリンパの流れを阻害してリンパが滞り、下肢の浮腫を発症するようです。
下肢で産生されたリンパの殆どは、体幹や胸管を経て左腋窩部を通り、左側の頚部リンパ節群から鎖骨下の左静脈角に注ぎ、静脈血液に混じり肺から心臓に返りまた全身を巡ります。 参考:リンパの流れ図
この場合のケアは、下肢のマッサージは勿論ですが、胸部や体幹のリンパドレナージに依る排液路全身の流れを作ることが大切です。
【重要】下肢リンパ浮腫の場合も、体幹や胸管・左腋窩部・左側の頚部リンパ節・左鎖骨のドレナージが大切です。
脚ばかりを気にしていて、心臓に誘導することを忘れがちです。
■リンパ浮腫、発症の頻度とセンチネル生検
センチネル生検によりリンパ浮腫のリスクを軽減
乳がんとセンチネル生検
センチネル生検により、リンパ節の郭清をしなかった人でも、10%以上の方に浮腫の発症が見られたと公表されましたが、色素注入法のみの検査で見逃された結果による手術の問題や、手術など物理的な要因以外に、放射線や抗ガン剤の治療などでもリンパ系に障害が起き浮腫を発症します。 |
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■子宮がんの場合 |
■リンパ浮腫の症状
【症状による分類】
第0期 | 浮腫は見た目では無く正常ですが、何となく違和感を感じ取る時期。 |
第1期 | 浮腫んでいるが就寝時その患肢を心臓より高くして寝ると翌朝には浮腫が引けていて、皮膚も軟らかく指で押すとへこみ痕が残ります。 |
第2期 |
皮膚が、溜まった蛋白により繊維化して硬くなり指で押してもへこまなくなります。 腕や脚を上げて寝ても元のようには戻らなくなり、患肢のこわばりや痛み・しびれ等の症状が出ます。 |
第3期 |
浮腫が酷くなり正常な腕や脚と比較すると皮膚の硬化が進み角化し、放置すると象皮病と呼ばれる症状になったり、他の合併症の心配もあります。 ※注意すること リンパ漏:患肢の傷や毛穴から皮下に溜まっているリンパ液が滲み出てくる症状 リンパ嚢胞(のうほう):リンパ液が体内で袋状に溜まり炎症を起こす症状(中空針で抜き取る治療) 蜂窩織炎(ほうかしきえん):リンパ浮腫の合併症として、患肢の組織が蜂の巣状に炎症を熾して高熱が出ます。これを繰り返すと象皮症の原因なります(抗生物質で治療) |
突然の発症
術後数年経ったある日、重い荷物を何気なく持ち上げたその瞬間、焼けるような痛みが走りその後痛みが増して腕や手・指が腫れてくる例もあります。このようにリンパ浮腫は術後数年経ってから突然に発症するケースも多いようですから油断できません。
術後13年経って発症した患者様からの手紙
リンパ浮腫に必要な知識を習得し、日常生活では患肢を保護しいたわりながら予防して下さい。
特に乳がん治療後は、数年経過してからの発症が多いようですから術後の経過を見守って下さい。
このホームページを見て相談される患者さんは、術後2年以内に発症した方が殆どですが、10年以上経過してからの発症も珍しくありませんし、入院中からマッサージをされていて退院に備えていた方もおります。
■早期発見
早期治療を行うことにより症状を治癒できなくても、浮腫を上手に管理して現状を維持しながら QOL(生活の質)を向上し将来の不安(生涯の浮腫による苦悩や、機能障害など)から回避することが出来ます。
術後のリンパ浮腫は、治療をしても完全には元に戻らないとのことですから、発症してからの治療ではなく、日常の経過観察を怠らないことです。
患肢と健側の、(手首 / 肘の下5Cm / 肘の上 10Cm)周経観察を毎週1回は実行し、異常を認識したら直ぐに医師に相談して下さい。
■早期治療が必要なわけ
術後リンパ浮腫の発症が確認されてから直ちに、バンテージ(弾性包帯)や弾性ストッキングなどの適正圧での圧迫を開始した場合、初期の3ヶ月は特に有効な結果が出るが、その後の効果は低下するとの報告があります。
圧迫圧は、上肢 30mmHg / 下肢 30~40mmHg が適正で、弾性着衣は6ヶ月単位で患部にあわせた適切なものに交換する(療養費として保険適用されます)
寸断されたリンパの流れは個人差にもよりますが、少しづつバイパスを再生(発生・新生)するそうですから、あきらめずに希望を持ってケアしてください(リンパ管の発生は術後3週間が大切な時期だそうです)
閉塞されたリンパ管の障害によるリンパは、皮膚表面に近いところで滞留しますから、皮膚をずらしながらさするリンパ誘導マッサージ(リンパドレナージ)は効果があります。
■ LVA リンパ管細静脈吻合手術
リンパ浮腫の治療は、リンパドレナージ(マッサージ)と圧迫などの保存治療が一般的ですが、重度のリンパ浮腫に進行して蜂窩織炎を繰り返したり複合治療で改善しない場合、リンパ管と静脈の血管を吻合(数カ所)する手術も進んできました。この手術で完治する保証はありませんが浮腫の程度は確実に改善されるようです。
LVA(リンパ管細静脈吻合術)は、リンパ液を静脈に流し込み心臓に返す(球心)ために、直径0.5mm程のリンパ管と細静脈の血管を吻合します。手術は全身麻酔か局所麻酔で皮膚を2~3Cm程切開し2~3カ所の吻合をして、5~10日間ほどで退院となるようです。
LVAは高齢な患者様には期待されるほどの効果が現れない場合もあるようです。それは吻合するリンパ管の筋肉(平滑筋)が衰えていると筋肉の収縮弛緩運動の力が衰えているためです。
LVAは浮腫の初期や若い方に有効な様ですから浮腫が重度にならないうちに相談されると良いです。医療費は健康保険が適用されます。
術前術後もリンパドレナージや弾性着衣による保存治療は必要です。
リンパは、一生懸命に新しい道を探しながら移動しようと頑張っていますから、セルフマッサージやバンテージなどで応援して下さい。
圧迫によりリンパの戻りを留めその進行を手助けするマッサージによりリンパが流れると、浮腫の症状が改善されますから楽になります。しかし時間が経つとまた患肢に溜まってきますので、毎日マッサージを施す必要はありますが、早期からの治療を心がければ日常の生活に支障をきたす程度は軽くなります。
術後のリハビリが重要です(これから手術を受ける方は特に意識して下さい
◎手術後3週間は、瘢痕(傷口)のあたりに切断されたリンパ管から新しい結合路ができる時間である。
◎切断されたリンパ管から芽が出て、同じリンパ管の近位部へ、あるいは隣接するリンパ管へと結合する。
◎隣接する静脈に開口することもある。
この情報は千葉市でリンパドレナージを施術されている専門家が、乳腺診療に携わる外科医の問いに答えたメールの抜粋です。
◆リンパ管のバイパス
(?)再生について
手術により切除されたリンパ節の部位で閉塞されたリンパ管のバイパス再生は、あり得ないから諦めなさいと患者さんに断言する医師も多くいらっしゃいましたが、最近ではリンパ管の再生は常識になってきましたから、人間の自然治癒力による再生を信じ希望を持って治療に取り組んだ方が良いと思います。
なぜならば信じて損をすることは何もありませんし、現在の医学では確かな事が分かっていないのが現実です。
気力と希望をもって治療に当たることは自然治癒力を増大し、気力のない希望をもたない治療は回復に悪い影響をもたらします(病は気からと言われる所以です)
浮腫が改善して、何処かに旅行したり遊びに行くことを想像しながら治療を進めて下さい。
自然治癒力について:余談ではありますが、私は2年ほど前に仕事中の事故で右足のアキレス腱を断裂し、同時にくるぶしも骨折しました、整形外科医から「どのように治したいですか」と聞かれたので「ゴルフが出来る程度でいいです」と答えました(笑い)。
これは、走り回れなくても日常生活に支障を来さない程度という意味で答えたのです。
後から言われたのですが、早く治したいか、時間をかけてもよいかとの質問だったのです。
早く治すなら手術、ゆっくりで良いなら自然治癒でのんびり治すとのことで、私は手術は嫌なので自然治癒を選択しましたが、断裂して縮んでしまったゴムのようなアキレス腱が元通りにつながるか心配しました。
3ヶ月ほど、ギブスや装具の着用で不自由しましたが、断裂して縮んでしまったアキレス腱は、その先から芽(?)が伸びてきて繋がり現在は何の不自由もなく生活しています、動物の自然治癒力には改めて感服しました(私の年齢は60代です)。
リンパ管の障害も自然治癒があると信じてドレナージを心がけてください。
【術後の患者様にお伝えしたいこと】
ご家庭で、自分の手のみで適切なドレナージを継続することは困難だと思います。
弊店では、18年以前からエアマッサージャー メドマーを使用する在宅ケアを紹介し、多くの患者様から支持を頂いています。
リンパ浮腫の治療で、国内ではトップクラスのリムズ徳島クリニック小川先生が監修した
DVD「リンパ浮腫のセルフケア」をセラピストにする在宅ケアをおすすめします。
在宅治療に有効で定評の医療機器メドマーはこちらのページをご覧下さい。
日東工器(株) メドマー紹介動画(ユーチューブ)
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◆リンパ浮腫発症の現状は
乳がんや子宮がんの術後にリンパ浮腫を発症し、治療中の患者さんは国内に現在5万人以上いるそうですが、その外の方に浮腫が全く無いわけではなく、
本人が気づいていないか気にならない程度の発症(左右の脚または腕の容積の差が5%以内)の方を含めるとかなりの人数になると思います。
この方たちの中には術後のリハビリが効果的に実行できたか、
または切除されたリンパ節の周囲でリンパ管バイパスの修復再生がスムーズに進行されていることも考えられます。
同様な病状の条件下で、リンパ節の郭清(かくせい)手術をうけられた方に、リンパ浮腫を発症する人と発症しない人がいるということは、
病状や体質による個人差もあると思いますが、閉塞されたリンパ管のバイパスが修復再生されている可能性が大きいと考えられないでしょうか?